Synthetic Biological Intelligence(SBI:合成生物知能)とは?【コーティカルラボ社の研究や解説動画について紹介】【人工生命は実現する?】

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ぺぐ
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こんにちは!ぺぐです。

みなさんは、Synthetic Biological Intelligence(SBI:合成生物知能)という言葉を聞いたことがありますか?あまり聞きなれない言葉かとは思いますが、現在、生体細胞を用いた「バイオコンピュータ」の分野で活用が期待されている最先端技術なんです。

日本ではまだ馴染みのない会社ですが、Cortical Labs(コーティカルラボ)という会社では、このSBIの活用に向けた研究・開発が行われています。

本日はそんなSBIとCortical Labsについてご紹介し、後半では同社公式チャンネルが発信している動画の日本語訳をベースに説明していきます。

Synthetic Biological Intelligence(SBI: 合成生物知能)とは

Synthetic Biological Intelligence(SBI:日本語で「合成生物知能」とも)、合成生物学人工知能(AI)の融合によって生まれる新しい知能の形といわれています。

この概念は、人工的に作り出された生物システムが持つ計算能力や適応能力を利用し、従来のシリコンベースのコンピューターでは実現できない高度な情報処理を目指します。

詳しくは、脳オルガノイドに関する記事でも紹介しました。

SBIの基礎には、細胞や遺伝子の操作を通じて生物学的システムをデザインする合成生物学があります。これにより、人工的な神経ネットワークや遺伝子回路が作られ、これらが高度な計算タスクを実行することを可能にします。

さらに、この生物学的システムを機械学習やディープラーニングのアルゴリズムと統合することで、従来のAIを超える知能を実現しようというのがSBIの目指すところです。

Cortical Labs(コーティカルラボ)とは

Cortical Labsは、オーストラリアに拠点を置くバイオテクノロジー企業で、SBIの研究開発に取り組んでいます。この企業は、脳の神経細胞を用いたハイブリッド型の計算システムを開発しており、これが合成生物知能の具体例と言えます。

Cortical Labsの主なプロジェクトの一つに、「DishBrain(ディッシュブレイン=培養脳)」があります。これは、培養された脳細胞をシリコンチップに配置し、これを使って計算を行うシステムです。

DishBrainは、脳細胞の持つ自然な学習能力と適応能力を活かして、従来のコンピューターチップでは実現できない効率的かつ柔軟な情報処理を可能にします。

このシステムは、脳細胞が電気信号を介してシリコンチップと相互作用することで、リアルタイムで学習し、適応する能力を持っています。例えば、ゲームをプレイすることを通じて学習し、タスクをこなす能力を向上させるといった応用が考えられます。

Cortical Labsは、この技術を通じて、人工知能の限界を超える新しい形の知能を創出することを目指しています。

ぺぐ
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すごい技術だ…!わくわくすっぞ!

Cortical Labs - DishBrain Intelligence
Cortical Labs are the creators of the DishBrain, combining living brain cells with computing devices to create machines with biological intelligence.

Cortical Labs(コーティカルラボ)の発信動画の紹介

Cortical Labs(コーティカルラボ)の公式(?)Xを確認していたところ、YouTubeで最新技術の紹介をしているようでした。

全文英語ですがとても興味深い内容だったので、要約した日本語訳を紹介させていただきます。

ぺぐ
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まだ3つしか動画がないのですが…。もっと見たいのに…。

元動画はこれです!

Synthetic Biological Intelligence(SBI:合成生物知能)の紹介

Cortical Labsは、合成生物知能(SBI)に焦点を当て、人間の血液サンプルからニューロンを作成する高度な技術を利用しています。この複雑なプロセスは脱分化と呼ばれ、成熟した細胞を誘導多能性幹細胞(iPSC=iPS細胞)に再プログラムすることを含みます。血液サンプルを幹細胞に変換することは、ニューロンを生成する基盤となり、さまざまな研究や実験的応用に不可欠です。

脱分化の重要性

2006年以前は、幹細胞を入手することは倫理的および実際的に困難であり、主に胚性のソースに依存していました。山中伸弥博士の画期的な方法は、皮膚や血液細胞のような成熟細胞をiPSCに再プログラムできることを示し、この状況を一変させました。このプロセスは倫理的な問題を回避するだけでなく、科学研究のための再生可能で多様な幹細胞源を提供します。

ぺぐ
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ここで日本が誇る山中教授の技術が!

医療分野での活用はニュースになっていたけど、こういった分野でも活用が進んできているんだね!

血液サンプルの収集と準備

  1. 血液の収集:
  • 血液サンプルの収集手順は簡単で、標準的な医療の血液採取と同様です。
  • 開始に必要な血液量はわずか2.5〜10mLで十分です。
  1. 血液成分の分離:
  • 収集された血液は、リンフォプレップのような密度勾配媒体を使用して分離されます。
  • この分離プロセスは遠心分離を伴い、白血球の豊富な層であるバフィーコートを分離します。
  1. 細胞のカウントと準備:
  • 分離された細胞は手動顕微鏡または自動方法を使用してカウントされ、開始時の細胞数が約500,000であることを確認します。
  • 実験の必要に応じて、これらの細胞は後で使用するために凍結されるか、すぐに再プログラムのために準備されます。

白血球をiPSCに再プログラムする

  1. 再プログラム因子の導入:
  • 再プログラムに必要な主要な因子には、Oct4、Sox2、Klf4、およびc-Mycが含まれます。
  • これらの因子は、Sendaiウイルスを使用して細胞に届けられます。このウイルスは効率性と安全性が高く、宿主DNAに統合されないため、好まれています。
  1. 培養とインキュベーション:
  • 感染した細胞は最適な条件(37度の摂氏および5%の二酸化炭素)に設定された細胞培養インキュベーターに配置されます。
  • 数週間にわたって、これらの細胞は遺伝的および形態学的変化を経てiPSCに変換されます。

iPSCの検証と拡張

  1. 多能性の評価:
  • 新しく形成されたiPSCは、特定の抗体を使用してOct4、NanOg、SSEA4などの多能性マーカーをテストされます。
  • これらのマーカーからの強いシグナルは、細胞の多能性を確認します。
  1. ゲノム分析:
  • 包括的なDNAシーケンシングにより、将来の実験において細胞株の安定性に影響を与える可能性のある遺伝的異常がないことを確認します。
  1. 分化能力のテスト:
  • iPSCのニューロンへの分化能力もテストされ、将来の研究目的に適しているかどうかを確認します。

長期保存と応用

  1. 凍結保存:
  • 検証されたiPSC株は拡張され、超低温で長期保存(最大20〜30年)されます。
  • この保存により、幹細胞の持続可能な供給が確保され、繰り返しのサンプリングや再プログラムの必要がなくなります。
  1. 多様な遺伝サンプル:
  • iPSC株はさまざまなドナーから生成され、多様な遺伝および細胞の多様性を提供します。
  • この多様性は、幅広い実験にとって重要であり、研究結果の適用性と関連性を高めます。

結論

血液サンプルからiPSCを生成するプロセスは、収集と分離から再プログラムと検証に至るまで、細心の注意を要するステップを伴います。

Cortical Labsはこの方法で多くのiPSC株を成功確立し、合成生物知能の分野に大きく貢献しています。これらの進歩は、研究の新たな道を切り開くだけでなく、幹細胞生成における倫理的かつ持続可能な実践を保証します。

革新的な技術と厳格な検証プロセスを活用することで、Cortical Labsは神経生物学および合成知能の可能性を押し広げ続けています。これらの技術の応用は、さまざまな科学および医療分野において有望な可能性を秘めています。

余談:本の紹介

バイオコンピュタータ 甘利俊一 著

ド直球なネーミングだったので、興味を惹かれて購入しました。
なんと、1986年という、今から40年近くも前の本なんですよね。
ちょうど、AIブームの第2波の最中のころでしょうか。

東京大学教授の甘利さんが書かれた本とのことで、当時の日本の最先端の考え方に触れることができるよい機会だとおもいました。

本記事で触れた「合成生物知能」に関する本ではなく、どちらかというと人間の脳の構造をどうコンピュータ上で再現するか、また脳の構造を解明するか、といったお話です。
この辺から、現在のディープラーニングの技術にどう繫がってくるのか、読み進めるのが楽しみです。

ぺぐ
ぺぐ

今井翔太さんの本から始まって、松尾豊さんの本にも手を出し、どんどん興味が広がっていっている…!

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